遅生まれの幼虫と菌糸ビン交換数

ブリードルーム

日本に住む人間は、四月スタートという文化の中で、生まれた季節が人生に影響を与えるという。早生まれは、同学年の子より発達が早く、特にスポーツで自信を持つ傾向らしい。
日本のオオクワガタは、ブリードされることも多く、温度コントロールさえすれば、年中発育を促せる。ブリード手法次第では、発育段階での菌糸消費量に違いが出る。

秋から冬にかけての主業務は、年間計画の精度を上げることだ。
幼虫の入った菌糸ビンは三年前から羽化率を上げるため、五~十二℃の環境であえて、冬を経験させている。春にペアリングをして産まれた幼虫は、夏と秋を経て順当に冬の環境に入る。
しかし、秋冬生まれの幼虫は人工的な夏の環境から、一気に冬の環境へ放り込まれる。

菌糸ビン交換本数の集計結果は、単純に数字だけ見ても一七年の秋だけ『交換率Ⅲ(表より)』が高く傾向がつかめなかった。
しかし、データは「暖冬」情報を加えることにより、論理的に解釈できるようになった。秋にペアリングして生まれた幼虫は、冬の平均気温が高いと菌糸の消費量が減り、逆に寒いと増える傾向にあった。
寒い冬は幼虫がエネルギーを必要として、菌糸消費量が高くなると仮説を立ててみた。

仮説の検証は来年同時期の集計まで待たなければならない。一方で来年の菌糸ビン計画は、予報に準じて暖冬ベースで組むことにした。
羽化までに使う菌糸ビン本数は、クワカブ研究所のみでなくブリーダーにとって予測し難い難問であろう。遅生まれの幼虫は、今冬どのような食欲で成長してくれるか楽しみである。(吉虫)

タイトルとURLをコピーしました