
カワラ菌糸ビンの管理はオオヒラタケ系と比べ厳しいほうが良さそうだ。前回の記事はオオクワガタ・オスの平均サイズ七五ミリの目標達成目前でカワラ菌糸ビンに変更してダウンした話を書いた。問題点はそれだけでなく、幼虫の死亡率が高いこともある。原因追及と恒久対策はサイズ減を含め年単位かかるが、現状から問題点への予防策なら出せる。
現在は一四〇〇㏄カワラ菌糸ビンでオオクワガタの三令幼虫を羽化に向けて育成している。カワラ菌糸ビンは対比的な部屋Aと部屋Bに置かれている。部屋Aは温湿度が制御され、幼虫産卵用に室温が高めに設定されている。部屋Bは最低温度一五℃のみの設定で、湿度が外気や天候で変わる。
部屋Aの菌糸ビンは3つの悪い状態が検出されている。一つ目は菌糸がギュッと縮まり隙間ができいる。二つ目と三つ目は通気に害が出る状態で、菌糸自体が厚い皮を作り中が湿っている点と、菌糸ビン・フタの通気口がふさがってしまった点だ。部屋A群は幼虫死亡率が六四・〇%に達している。
一方で部屋Bの菌糸ビン群は菌糸の被膜が薄く中が比較的パサパサしている。幼虫の死亡率は十分の一の六・三%に抑えられている。部屋が違う2つの群を比較すると、推定原因は明らかな違いがある点、すなわち室温、特に最低又は平均温度だ。部屋A群は部屋Bの一五℃前後の最低温度と違い、菌糸ビンを移動した最初の一カ月が一九~二二℃、三ヶ月後に二四℃を下らなくなった。
オオヒラタケ系菌糸ビンは温度が高い場合でも比較的ダメージを抑えられるが、カワラ菌糸ビンは絶望的な被害が出る。今言えることは室温を二二℃までに抑えておくと無難だ。今年は外気温が昨年より高く、さらなる注意が必要だ。結果として情けない話だが、我々の使命は失敗談を参考にしてもらうことだから、恥を忍んでここに記す。(吉虫)


