
「諸行無常」という言葉は日本人にとって一般的な言葉だ。全ての現象や存在は常に変化する、又は永遠はない。ブリードは満足度の高い血統が作れても、いつか何らかの不具合で崩れてしまう。必要なことは血の入れ替えという選択肢だ。
過去四年は天国から地獄へ落ちる経験をした。数百頭の種虫からサイズ選別を繰り返したペアリングは、四世代目で羽化数とサイズが最大化した。五世代目は予期せぬ不具合の発生や焦りからの判断ミスも重なり、二年連続で羽化数を減少させた。ショックを受けたが、気持ちは切り替り、V字回復を目指した。
現実を知るため、筆者は基本に立ち返り各指標を並べてみた。悪い指標は一回目、二回目の菌糸ビン交換時の死亡率が高く、羽化不全の個体が増えていた。冷静に考えて血の入れ替えが必要だと確信、二年かけて、二つの種虫群に別の血を入れた。
未来予測は可能だが、その通りとは行かない。また、新しい種虫は良血とも限らないので、将来に複数の選択肢が残る様に組み立てた。①新しい血と既存の血のクロス群、②入手先の違う新しい血のクロス群、③既存の血のみの群と三グループでペアリングした。
二四年ペアリングの結果は徐々に出て来た羽化数は二五年一月から五月までの期間で過去最高を更新した。一回目交換時の幼虫死亡率は減少した。三つの群を比較すると死亡率は①群と②群の新しい血が入った群で過去最低レベルだった。しかし、羽化不全は大幅な改善が確認できない。
希望の星もある。詳細分析から羽化不全率は①群で〇%、②群で一九%、③群で八一%と新旧クロスが突破口になる可能性を示唆した。二五年ペアリングはネガティブな数値として幼虫数が半減している。これは新しい種虫の質だろうか?V字回復の道程は長そうだ。世の中はそんなに甘くない。(吉虫)


