オオクワガタ×カワラ~引き続き実験

ブリードルーム

今回は過酷な実験をした。きっかけは二年前のカワラ菌糸ビンでの失敗だった。実験はカワラ菌糸ビンに幼虫を入れ、半年以上経過させ、中を確認することだ。ポイントは室温が高くならない一八~二〇℃に設定することだ。この温度帯は最近の実験から、菌糸の成長が著しく蓋を覆い尽くすリスクもあった。

菌糸を開けた日は予定よりも二カ月遅い八カ月後だった。事前予測は「幼虫は三分の二以上死んでいる」。結果は死亡率が四割強、前蛹が約二割、残りが菌糸ビン交換の対象だった。菌糸の成長は死亡の要因にならなかった。

実験からの気付きは菌糸状態と木材分解の関係だった。カワラ菌糸ビンは白い部分がなくなっても幼虫を十分なサイズに成長させていた。解明されてないが、幼虫が必要とする栄養は菌糸と腐朽木材の両方から摂取するという説がある。この説が正しいとすれば、カワラ菌糸は変色しつつも維持され、木材の腐朽を進めることができたと考えられる。

なぜ四割強の幼虫が死亡したのか?データ解析はある特徴を浮き上がらせた。ペア毎の生存率を五つの群に分類すると、全頭生存の群とほぼ全頭死亡した群、その間に段階的な死亡率を示す群がみられる。幼虫は親から受け継ぐ腸内酵素を持つという説がある。説に基づくのであれば、カワラ菌糸と腐朽木材に適応できる群とできない群が考えられる。

死亡率が中間的な群はどの様に解釈すべきか?幼虫は自身の糞もリサイクルして利用しているという説がある。死亡した幼虫は材をドロドロになるまで腐朽させた。摂取食材を再利用可能なレベルに消化できる能力は親が同一でも一律でない場合があると示唆する。

なぜ、オオクワガタ×カワラに固執し続けるのか?勿論、過去の失敗もある。それよりもカワラはサイズに貢献しないか確かめたい。実験は無慈悲で仮説の積み重ねにしかなっていないが、新しい扉になると信じている。(吉虫)

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