新しいペアリングシーズンはみなかみ町の遅い春と伴にやって来た。クワカブ研究所周辺の田は水が張られ、苗が水面を埋めつくしていく。今年は新施設で3回目のブリードシーズンだ。オオクワガタの幼虫数は、前年を上回るペースで推移している。
もし、今シーズンの成績が過去2年と同等かそれ以上であれば、来年はペアリング数を減らす予定だ。ブリードの仕事は、産卵数によって先の工数が決まる。作業は1頭増えるごとに次の作業が先1年ないし2年に加算されていく。
・菌糸ビン入れ、交換・合計3回(平均値)
・羽化割出1回(蛹、羽化直後の場合は2回)
・エサやり(1~2週/回)
・出荷作業、次期ペアリング作業※
※ペアリング後の種虫は、行き先がなければ、死ぬまでエサ交換が続く。クワカブ研究所はただブリードをして健康な種虫を提供しているだけでない。目的の半分はデータを取り、ペアリングに関する生物学的、工学的な疑問を解明することだ。悩ましい点は、複数世代を跨いだ連続データを取るため、例え幼虫が多くてもリリースできないことだ。
果たして、クワカブ研究所はペアリングから孵化までの技術を確立できたのだろうか。結果はイエスだ。しかし、真の評価は「再現性」のある技術になっているかである。我々はまだ上手く行っている真の理由を見落としているかもしれない。
技術を確立できたと言える日はいつだろうか。それは今年の目標を達成し、来年に種虫を減らしても、目標の幼虫数を孵化させる時である。田んぼで例えると、その日は2020年の稲刈りの頃だろう。(吉虫)