V字回復~オオクワガタの血の組み合わせ

ブリードルーム

V字回復は有能感が出る言葉だ。それは外から見た時の話しで、渦中の現場は頭を必死に使い、忍耐と冷静な判断が求められる。V字回復の実現条件は道筋が見えていることだ。クワカブ研究所はこの四年間、奇形や死亡率に苦しみ、脱却すべくV字回復の真最中だ。

手放しで喜ぶことができないが、ブリード中の幼虫の生存率を上げる方向性がみえてきた。加えて、羽化不全、奇形も減らすこともできるかもしれない。方法は単純であるが前の血を活かしつつ、新しい血を取り組み系統を作ることだ。ここで重要なポイントは安易に頭で考えた理屈や潜入感でなく、実行して客観的なデータで具現化することだ。

二〇二四年から始めた試みは五回の累代を繰り返した「系統T(1)」、「系統T(2)」と市場で調達した種虫「系統U」を掛け合わせて「系統V」をつくることだ。「系統T」はサイズアップを実現しつつも、ブリード中の生存率が低く、羽化不全や奇形が一%未満から五%まで増えた系統だ。オオクワガタのブリードは成虫の熟成期間があり、種虫を隔年毎に使用するため「系統T」の(1)と(2)に別れてしまう。

ではデータをみよう。菌糸ビン交換一回目の生存率は「系統V」が目標の九〇%以上を実現できている。推定要因は「系統U」も生存率八九%あり、「T」と「U」の血が相性良く交わったことだろう。これは二〇二四年から一貫している結果なので否定できない。

気になるデータは、二〇二五年に「系統T(1)」も生存率が上昇している。推測だが、元々、系統T(Ⅰ)は(2)に比べ生存率が高く、累代が進むに従い血の組み合わせが良い方向に行っているのだろう。データにないが、羽化不全や奇形は最悪だった五%から減少している。主な要因は全工程の温度を含む管理を見直したことにあるが、血の組み合わせの影響も否定できない。(吉虫)

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