コロナ禍とブリードの遠くて近い関係

ブリードルーム

コロナウイルスは一年半経過しても現代科学技術で抑え切れない。ウイルスは原始生物の時代から存在したそうだ。生物の進化はウイルスが影響したと考える説がある。コロナウイルスはコウモリの体内なら悪さをしないがヒトにとって害になる。ふと、コロナ禍とブリードはまわり回ってつながると思った。

もともとヒトは自然世界の住人だった。農業はヒトと自然との関係を変えた。ヒトは森を伐採して農地という自然界を操作した空間を作り、生物を人工的に操作し始めた。農業による成功体験はヒトを自然界から距離を置く方向へ導くことになった。

人間は町を作るようになり、自然の一部だった頃にあった抗体を失ったかもしれない。人間の欲望はさらに自然界を開拓し続けた。切り開かれたばかりの自然は自然界でも人間界でもない中間界となり、独自進化したウイルスと未知との遭遇を引き起こした。たくさんの犠牲のもとに新たな抗体を得たヒトは人間界と中間界を広げた。不幸なウイルスとヒトの出会いは幾度となく繰り返された。

現代は自然界が矮小化され、ヒトが闊歩する歪な空間だ。園芸、昆虫飼育、そしてブリードは人間が元々所属していた自然界から完全に離れられない証しに思える。なぜなら、ヒトは人間界に疑似的な自然を作ろうと無意識に行動するからだ。そして、生物の操作する経験は昆虫飼育でもブリードとして引き継がれている。

ブリードは「人間らしさ」の象徴的行為だと思う。ヒトは発達した脳により生物の改変を可能した一方で、精神的に自然界と完全に隔絶された生活を好まない。コロナ禍は文明社会における不幸な出会いかもしれないが、自然を有利に活用したいという欲望がある限り繰り返されるだろう。コロナ禍もブリードも自然への渇望と肥大した脳の欲望から生れた「人間らしさ」の産物に思える。(吉虫)

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