大量生産はQ品質、Ⅾ納期(リードタイム)、Ⅽコストのバランスが重要である。数を一定期間に求め過ぎた場合は、品質が悪化し、コスト増につながる。サイズなどの品質の高さを求め過ぎると、コストは膨らみ、完成時期が遅くなる。バランスのとれた生産はロジックで構成されたシステム(仕組)で実現可能となる。大量生産は感覚的な日常と違い、非日常的な計画や管理が求められる。
ブリードも例外でない。クワカブ研究所は昨年実績で八千頭以上の幼虫と三千頭以上の個体識別された成虫を生産している。工程は図のように複数あるが、必ずしも順番通りにならず平行作業になる。非計画的な運営では乱流化して制御不能になる。手法は川上から川下まで成功率の高い方法で組むためベストでなく最適な状態を目指す。
キーワードは「全体最適化」である。それに対比されるワードは部分最適化である。全体最適化は俯瞰的な視点が必要であり、根本原理を見誤ると不具合を起こしてしまう。クワカブ研究所は大量ブリードの根本原理を、生物学に加えて生産、物流だと考えている。生産は図の様に5Ⅿという基本がある。物流は整流化、単純化や滞留、ムダの排除を基本とする。理想だけの計画は現実の世界で人が足りない、場所が足りない、空調能力が不足などを起こし、結果として失うもののほうが大きくなってしまう。
人(時間)、スペース、資金などのリソースは湯水の様に使えない。だから考えるのである。生産現場は一般的にムダ、ムラ、ムリを排除して不確定要素を減らすことが基本となる。クワカブ研究所の初年度は人員計画が甘くムリが重なり大量の幼虫を殺してしまっている。全体最適化後の状態は現状の能力と考えて良いだろう。能力は全ての項目をバランス良く伸ばすことが肝心である。持続可能なブリードために、ムリは禁物だ。(吉虫)