「親が同じクワガタは五世代まで繰り返し累代できるが、六世代目でぱったりと産まなくなる」と聞いたことがある。これは経験則なのか、都市伝説なのか。十年前に、たまたま入手した岡山産レッドアイ血統は昨年でちょうど五世代目の羽化を終えた。同一の親からはじまる累代は、ブリーダーに多くの疑問と挑戦の機会を与える。
ある日、「ホワイトアイがいる」と報告が上がってきた。調査をすると、岡山レッドアイ血統五十三頭の中に一頭だけ目の色素が抜けたホワイトアイがいた。その個体は光をあてじっくり観察すると、薄っすらと赤い色素が残っている可能性が否めなかった。他に六頭は色素が僅かに抜けた個体だった。筆者はこれらをピンクアイと呼ぶことにした。
ある日、ホワイトアイのブリーダーが「ピンクアイは時間が経つとホワイトアイになる」と言っていた話を聞いた。真偽を確認するため六カ月待って再チェックをした。六頭はピンクアイのままだった。ここまでの出来事を総合すると、眼の色素が抜けた理由はランダムな突然変異である可能性が強まった。
次に累代情報を整理すると、同じ親から始まった系統は、人間で例えると第一、第二世代で兄弟同士、三代目以降から兄弟、いとこ同士で交配されていた。共通の父を持つペアは各世代に存在していることが分かった。統計的に分類すると、一○○%レッドアイ、ピンクアイ六七%、ピンクアイ又はホワイトアイ八%の三系統に分かれていた。残念ながら配合と眼の色素の関係は現時点で一定の法則性をみいだせていない。
今年の秋は第六世代のブリードを行う。六代目は冒頭の経験則通りに産卵が止まるのか。変異を起こした個体同士の配合は眼の色がどのように変化させるのか。また、累代を重ねると、眼の色素が減少した個体は増えていくのか。答えは新たな挑戦の先にある。(吉虫)