本当に累代を重ねた結果か?【後編】

ブリードルーム

前回の記事は【前編】として「ツメ開かない」という異常について書いた。今回は続きなので、この症状が分からない人は前の記事を探して欲しい。疑念は安易に異常の原因を累代することだ。今回の記事は三つの推定原因を立ち上げ、今後の検証プロセスを書く。

第一の推定原因は累代に起因するⅮNA異常仮説だ。一般的には「血が濃くなる」と表現される。クワカブ研究所の累代は数百頭から始め、大型化する個体を選別したため、血が濃くなっている。遺伝子は目に見えないので累代を重ねて次世代で症状が出るか確認中である。平行して、問題回避する策は新しい血とクロスさせてブリードを続ける。

第二は進化仮説である。進化という言葉は一般的に誤解されており、機能が追加されるだけでなく、要らない機能がなくなる事も含む。自然の個体は木やその「うろ」にしがみついて垂直方向の姿勢で生活している。一方、ブリード個体は五世代もビンの中で水平方向の姿勢で生活し続けた。ツメはほとんど使わなくて済む。中肢の「爪開かない」は症状全体の六割に及ぶ。原因は一番使わない箇所が進化したと推定する。昆虫の変異は哺乳類よりも速いと言われる。今後は個体を垂直方向に飼育方法を検討し比較実験をする。

最後の推定原因は環境仮設であり、環境要因が起因する羽化不全である。過去十年の実験から、欠損、異常のある個体は次世代で同一、又は同等の羽化不全を再現していない。問題は蛹化時の環境でないかと考えた。思い当たる点は室温二五~二八℃以上の部屋にいたことと、大型化したメス個体で起き易いことである。蛹化から羽化にかけての高温状態は蛹室を不安定化させるだけでなく、細胞分裂のスピードを許容範囲以上に上げて遺伝子のコピーエラーを起こしている可能性がある。暫定処置は上限を二十二℃で羽化まで持っていく実験を試みている。

いずれの推定原因も検証するのに一、二世代かかるだろう。この期間は暫定処置と原因追究を平行して行う。カイゼンの最終ゴールである恒久対策は四、五年かけて取り組むつもりだ。大切な事は集中力を細く長く保ち、知的好奇心を維持させることだと思う。(吉虫)

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