~成虫になれなかったオオクワ達~
ブリードは、死を身近なものにする。陽の光を浴びる分野がサイズならば、死はその影であり、一対を成している。前回は、成虫時の死亡傾向について、クワカブ研究所のデータから分析した。今回は、幼虫割出から羽化までの成長段階で死亡した4574頭を分析したい。
一、二令幼虫の死亡は、全体比率の中で半数以上を占める。三令へ成長するステップは、幼虫の成長プロセスの中で、最も高いハードルと言えるだろう。一回目の菌糸ビン交換時で見つかる死骸は、菌糸に飲み込まれた状態か、時に死体すら確認できない状態にある。この観察結果は、一令、又は二令で菌糸ビンへ入れた幼虫が、三令にならないまま死亡していることを示唆している。
幼虫は三令まで成長しても安泰と言えない。三令幼虫の死亡比率は全体の二八%を占めている。二令、三令を含めた幼虫時の死亡は、全体の八割を超える。死亡比率データは、幼虫の育成環境がいかに重要か物語っている。大量ブリードは、温度設定、作業にムラが出来やすい点が難点だが、改善の余地はまだあると思う。
最後の難関は、蛹化から羽化である。蛹化時の死亡比率は全体の一〇%、羽化中は八パーセントとなっている。特筆すべき点は、羽化中の死亡数にオスとメスの差がないことである。総論としては、幼虫割出から羽化までの死亡比率が、成長の初期段階に大きく、後半に小さくなる。今年は、データを活かし、素晴らしい生のために死と向き合い、死亡数を減らしたい。(吉虫)