古人の叡智はブリードに通ずる

ブリードルーム

『覆水盆に返らず』は中国の故事で、一度したことが元に戻せないことをいう。昆虫のブリードはこの言葉がよくあてはまる。やってしまった事は悔やむより未来に向かい再発防止や深い理解に役立てたいものだ。筆者が大切にする古人の叡智は意外と昆虫ブリードにも通ずると思い、書き出してみた。

『人事を尽くし天命を待つ』は人の能力で可能な限り努力をして、焦らずに天の意志に任せるという意味だ。生き物を相手にすると、経験とロジックが助けになるが、結果は常にばらつくものである。我々の生き物に対しての知識は限界がある。できることは日々学習をして、できる限りの手を打ち、どんな結果になろうが受け入れる覚悟を持つことだ。

『人間万事塞翁が馬』は、不運なことが幸運につながったり、その逆だったりと、幸か不幸かは容易に判断できないという意味の故事だ。小さな成功や失敗、幸運や不幸で一喜一憂している時間は度を越せば百害あって一利なし。成功は大失敗の前触れかもしれないし。失敗は大成功のヒントかもしれない。大切な事は今やっている事に好奇心を持ち、取り組み続けることだ。

『セレンディピティ』は、幸運な偶然をつかむ力をいう。重要なことは「意識する」、「気付く」、「つかむ」の3つといわれる。『人間万事塞翁が馬』の心得があれば、心は過去に縛られず、未来に熱すぎも冷めすぎもなく、本質に向き合うことができる。ブリードは成功からも失敗からも学べ、「気付き」にともなう「行動力」が大切なのだ。

『上善如水』は水の働きから学ぶことがあると説く。水は丸い形にも四角い形にもはまる。つまり、水はしなやかさの象徴といえる。我々は人と比較し、成功や知識を誇示したくなる。ブリードはしなやかに生き物と向かい合い、特性をつかみ、柔軟的に対応すべき分野だと思う。(吉虫)

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