五ゲン主義~現場派 vs データ派

ブリードルーム

昆虫ブリードは、規模が大きくなるほど経験や勘だけでは管理しきれなくなる。筆者が生産活動に関わる中で、とくに重要だと考えているのが五ゲン主義である。これは現場・現物・現実という三現主義に、原理・原則を加えた考え方である。製造業の現場で培われてきた考え方だが、人工知能やデータ解析が急速に進歩する現在、昆虫ブリードにも十分に応用できる。
例えば飼育室では、現場で温度や湿度を見る。現物として幼虫や菌糸瓶を確認する。そして予定通りに育っていなくても、その事実を現実として受け入れる。さらに、なぜその状態になったのかを温度、菌糸、交換時期、成長の仕組みといった原理まで掘り下げ、飼育条件や作業基準という原則に戻して考える。大切なのは、自分の経験に都合よく解釈するのではなく、本来の目的に沿って問題や課題に向き合うことである。
現場派にもデータ派にも落とし穴はある。毎日虫を見ている人は小さな変化に気づきやすい反面、個々の事例や感情に引っ張られ、全体を見失うことがある。一方、数百頭を扱うようになれば、体重、交換日、羽化率、死亡率などのデータを見なければ全体の傾向はつかめない。しかし、数字だけで判断すれば、菌糸の状態や幼虫の動きなど、現場でしか分からない異変を見落とすこともある。
現場派とデータ派が対立しても意味はない。五ゲン主義は、現場・現物・現実・原理・原則のすべてを重視し、両者の間に最適解を求めるための指針となる。ブリードの規模が大きくなれば、一つの判断ミスが大きな経済的損失につながる。だからこそデータは重要である。ただし、データには人を現実から遠ざけ、「概念の住人」にしてしまう魔力もある。数字を見る。そして虫を見る。両方を行き来することこそ、ブリードにおける五ゲン主義なのだと思う。結局、基本はそこにある。(吉虫)

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