オオクワガタ多頭数飼育のラスボス

ブリードルーム

「大きな問題は部分的に解決していく。」この成句は米国心理学者の著作を稲盛和夫氏が訳監した「今できることから始めよ!」に書かれている。クワカブ研究所はブリードという大きな問題を、好不調の波や限られたリソースの中で一つ一つ解決してきた。二○二三年に対決するラスボスは3令幼虫の死亡率だ。

表はクワカブ研究所が新しい施設へ引っ越してから六年間の幼虫数、死亡率、羽化率をまとめたものである。最も興味深い点は低迷期を除き秋ブリードの死亡率、羽化率が春ブリードよりも良い成績なことだ。春ブリードは六○%を切る羽化率が並ぶが、低迷期を除く秋ブリードは七○%台と安定している。

クワカブ研究所のペアリングはデータに基づき春ブリードで三月から六月にかけて、秋ブリードで九月中旬から十二月初旬まで行っている。3令まで育った幼虫は春ブリードで七月末から十二月初旬、秋ブリードで二月下旬から五月中旬に一四○○㏄の菌糸ビンへ移し替えられる。春ブリードの3令幼虫は温度が下がる真夏から真冬を過ごす。一方秋ブリードは温度が上昇する晩冬から真夏を過ごす。

3令幼虫の死亡率を低下させる策は「今までと違うこと」をやる。今まで春ブリードの3令幼虫は菌糸劣化防止と羽化時期の分散のため、冬の間中ずっと一○℃前後の低温部屋に置いていた。二○二二年春の3令幼虫は羽化時期がかぶっても問題なしと判断したので、2令幼虫育成に近い二五℃前後の部屋に入れた。2令幼虫の死亡率は産卵から同一環境で過ごさせて改善されたので、この方法も使う。

近二年は幼虫数、2令死亡率のカイゼンを進めた。成果は出たが、不覚にも二一/二二年の3令幼虫が過去最も死んだ。目標は多頭数飼育でも羽化率八○%だ。そのためには3令幼虫の死亡率を一○%に抑えたい。高パフォーマンスの安定化は投入する工数、材料や高熱費を落とすコスト削減に繋がる。(吉虫)

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