僕はオオクワガタ、今年の夏に成人した。体長は80ミリある。僕たちの種は成虫になると、身長が変わらない。父は79ミリあった。人間は僕らを小さな部屋の小さな入れ物の中に1頭ずつ入れる。だから、僕は父を見たことがない。
僕らのことをあれやこれやと操ろうとする吉虫は、サイズアップした僕を見て、大台に乗ったと喜んでいる。そのくせ、オオクワガタのギネスは90ミリ台だとディスる。本当に失礼な奴だ。僕が気にしている事は体長でなく、遺伝子を次の世代につなげるため、ライバルに勝つ強さだ。
吉虫は父、父と母の祖父、祖母の兄弟の写真を持っている。さっさと編集すれば良いのに、奴は今になって仕上げた。「先祖は君と似て腮がしっかりしている」と偉そうに言う。吉虫はその結果から仮説を立てたようだ。僕の様なしっかりとした腮を持つタイプは、体格も良くサイズアップし易いというものだ。僕はその点に関して興味がないが、僕の息子を見て欲しいと思う。
記録写真はオオクワガタながら良いと思う。理由は人間が僕らオオクワガタを、あまり理解していなので勉強して欲しいからだ。吉虫いわく、僕らがもう少しじっとくれると、良い写真が撮れるという。僕からすれば、写真のクオリティが低い訳は、写真の腕と虫の扱いだ。せいぜい試行錯誤してくれ!(T2262SR2M800-7・代筆by吉虫)