レアケースの話は記録に残しておくべきだろう。内容は面白いか分からないが、何かの役に立つかもしれない。二年前、クワカブ研究所は四カ月から六カ月の間、マットの入った二○○㏄カップに低温状態で保管されたオオクワガタの幼虫を受け取った。この条件下にあった幼虫はどのような影響を受けたのか、まとめてみた。
最も影響を受けた点は羽化率だった。羽化した幼虫は五九・七%。同時期に通常育成をした幼虫は羽化率七一・三%だった。七〇%前半の羽化率は良い値でないが、それよりも下回る結果となった。
第二の比較は羽化サイズだ。種虫のサイズに違いがあり、条件をそろえるため比較は同分類の種虫と羽化虫のサイズ比で行った。低栄養、低温幼虫の結果はサイズ比がオスで九一・三%、メスで九三・八%とダウンしていた。一方で同時期に通常ブリードをした幼虫はオスで九六・八%、メスで九八・九%だった。低栄養、低温幼虫の羽化サイズはオス、メス関わらず五ポイントダウンした。
ここからはある説と今回の実験結果を比較する。ある説とは「幼虫は低栄養、低温度下にあっても冬眠に似た状態に入り、その後、適温下で栄養を与えれば育つ」というものだ。今回の結果は育つことを証明した。しかし、悪影響は羽化率、羽化サイズに出ている。
影響は度合いの問題でないかと考える。低温、低栄養な状態が長ければ、羽化率、サイズはより下がる。データは四ヶ月から六ヶ月も適正でない条件下に置かれると影響が出ると示している。つまり、幼虫は不適正な条件で育てる時間が短いほど良いと言える。一般的に幼虫育成は二令から三令へのステップ、3令の成長期が重要だ。今後、この様な実験するつもりはないが、また低栄養、低温下の幼虫に巡り合えたら、データを取り、今回の分析と比較してみようと思う。(吉虫)