過去にあった「お客様の声」が頭に残っていた。飼育レポートは温度管理ができる前提に書かれているが、できない場合の情報がない。そんな感じだったと思う。クワカブ研究所では過去の記事で「東京マンション実験」と称して温度管理なしの実験結果を書いていた。この実験は今も続いている。
過去の記事は室温が三二℃になるとオオクワガタの幼虫数が激減するというものだった。近年はペアリングから幼虫割出の気温が高くなっている。データ①は気象庁DBから抽出した過去五年の五月から七月の最高気温だ。五月と六月は年により上限と下限、その幅が違った。七月は二○二一年以降に上昇した。
では、過去五年の幼虫割出はどうだったのか。データ②の数字を愚直にみると、二○二一年以降は幼虫割出数が以前より多くなった。当然、生き物は気温以外にも他の変動要素でアウトプットを変えるが、実験結果は三二℃以上でも、五月の産卵から、六月の二令幼虫、七月の三令幼虫の時期を耐え抜いていた。
なぜ、最高気温で比較したか。理由は飼育環境がマンションの最上階だからだ。コンクリートの屋根は昼間に熱を蓄え夜に放出するため、部屋の温度が最高気温に引っ張られ昼夜問わず高くなる。データ③は本年七月二十三日から八月十三日の室温だが、空調使用で三○℃以下に抑えた日以外は最低でも三二℃を下らず、最高で三五℃まで達した日もある。今年の七月は気象庁データから猛暑日一三日、真夏日一六日と室温の高さが想定できる。
ここまでの話はあくまでも五~七月の育成期間を経た幼虫割出のことだ。産卵結果は気温以外にも高温に耐えうる血筋やその他諸々の要因があったことを前提にしたい。次回はより厳しい六~八月に行った二回目の幼虫割出について報告したい。加えて、羽化率についても書くつもりだ。昨年はカワラ菌糸の扱いが不慣れなため大失態を犯した。(吉虫)