暑くなる日本!温度管理なしブリードは?Ⅱ

ブリードルーム

九月初旬、幼虫たちはもぐらず菌糸ビンの上のほうにいた。幼虫の皮膚は人の体温だと暑すぎると聞く。猛暑はカワラの菌糸自体も異常な温度にするのだろう。今回は前回引きつづき温度管理なしで行うオオクワガタ・ブリードについて書く。テーマは六月から八月に行う二回目の幼虫産卵とカワラの菌糸ビンだ。

実験場所は夜になると昼間に蓄積された熱が室内に放出される東京のマンション最上階である。七月は猛暑日一三日、真夏日一六日と異常に暑かった。八月は最高気温が過去五年ではじめて三一℃を下らなかった。空調で二十九℃まで落とした二回の週末を除外すると、室内の温度は三一から三六℃の間で推移して、日中の外気温を夜間も室内に保っていた。

一般的に、三一℃を超えた環境は産卵、一令、二令幼虫育成の限界値を超えている。しかし、幼虫割出の結果は二二ペアで一ニ頭(指数〇・五五)と過去五年で最低ながらも、〇頭でなかった。産卵時期の六月は最高気温が真夏日で八日、夏日で一四日あったが、二五℃以下の日も八日あり、ギリギリ産卵できる環境だったと推測する。むしろ、八月の三一~三六℃の室温は幼虫を死に至らしめ、幼虫数を激減させたと考える。

生まれれば良いのか?筆者の懸念事項はその後の生存率である。昨年ははじめてカワラ菌糸ビンを使ったが食いが良過ぎるのか、また超高温の環境下で菌の劣化が速いのか、すぐに色が白からこげ茶色に変わった。昨年は菌糸ビン交換をオオヒラタケ系菌糸ビンと同様の十週目にして四五%が死亡した。

今年は四~六週で菌糸ビン交換をしたが、猛暑が起因して七七%が死亡した。オオヒラタケ系の菌糸ビンを使用した三~五年前は猛暑の度合いこそ今年ほどでないが、羽化までの死亡率が三二~四六%と悪環境下で低く目に抑えられた。もしかしたら、超高温時のオオクワブリードはオオヒラタケ系の菌糸を選ぶのが得策か。逆に捉えれば、カワラの菌糸は低めの温度に強いのかもしれないし、他のデータから大型化、秋の産卵に有効かもしれない。これらの仮説は今後の宿題とさせていただきたい。(吉虫)

 

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