競馬好きは、昆虫ブリードでも血筋を楽しむ傾向にあるかもしれない。
二〇二〇年は昨年に続き、羽化割出の開始時からサイズアップ個体を確認できた。祖父、父は七五ミリ台だが、別腹から八〇ミリ前後のオスが産まれている。血の必然性、意外性のロマンを求めながら分析を進めると、サイズアップ要因は、父方の優位性と母方の先祖にあるようだ。
父「T1728SR1M755」は、交尾をした三頭のメスから安定して80㎜前後のサイズアップ個体を輩出している。図は三系統の血筋を、競馬の血統表の様に表現してある。父は同じなので二系統目以下は省略してある。父方の特徴は、曾祖父から祖父の世代で150㎜の大型化が起きている点だ。また、本年羽化個体の種虫ラインは、オス78.5㎜以上、メス49.0㎜以上と設定していが、三系統ともクリア率が50%を超え優秀である。
クワカブ研究所は、サイズアップの影に母方の血ありという仮説を持っている。母方に入っている「251」と「331」は、二年前に取り上げた父「1458系」と組み合わせ、80㎜前後までサイズアップさせた母方方の血だ。また、第一系統は、大型化に有望な佐賀県筑後川(流域)産と能勢YGを内包する「251」の4x4クロスブリードになっている。興味深い点は「331」で、一見すると特徴が見当たらないが、意外なサイズアップ因子を持っているのかもしれない。
個人的に感動したことがある。八年間のムダかもしれないと悩み、続けた「0対策」により産まれた9000番台の個体が、この血統表に入っていることだ。「0対策」とは、大き目のメスが交尾に失敗した際に行う再ペアリングである。次世代での活躍を期待して、多くはその時に最も有力なオス達と組合せている。その結果、第二系統は「TM0084」のクロスブリードになっている。「0対策」は、デメリットとして失敗も多く、産卵数も少ないため、止めるか否か、毎年迷っていた。意外な結果に満足している。(吉虫)