走馬灯のように

ブリードルーム

光陰矢の如し、少年老い易く学成り難し!?もう十三年目か、ブリードの仕事に関わって。正直なところあっという間だった。時がたっても変わらず、前のみを向いて取り組んでいる。しかし、過去、全部を振り返ることも尊く、多くの気付きを与えてくれる。

過去の記録を見返すと、様々な出来事や感情が思い浮かぶ。ここまでに幼虫は九万七千頭を孵化させ、成虫は二万八千頭のクワカブを羽化させた。残念な事は十万頭や三万頭など切りの良い数字でないところだが、来年前半に達成できる見込みだ。

業務の都合上、九十八%はオオクワガタだが、他にもホペイ、ノコギリ、ヒラタ、パラワンオオヒラタ、ⅮHヘラクレス、Hヘラクレス、ゴロファピサロなどもブリードした時期もあった。悔しい思い出は単価の高いヨツボシヒナカブトで、幼虫から羽化させたが、ブリードに失敗したことだった。

はじめのコンセプトは「低予算番組」だった。社内で活用されてない部屋、機材、材料を掻き集めて、ブリードルームを作った。最初は二名、軌道に乗り始めて三名になり、その後二名になり今に至る。部屋は事情により新たな場所に引っ越して、比較的低予算でアップグレードも達成できた。

技術面は初期に飼育日記やブリーダーのページを読み漁り、最も効率的に上手く行きそうな手法(仮説)を組み立てた。その後は温湿度とブリード結果を見比べながら手法をアップグレードして行った。その過程で産卵、羽化サイズアップの確率が高くなる方法を見つけ、幾度かのピンチを乗り越えてきた。

失敗は宝。判断等の人為的要因は学習して二度繰り返さず、生物的な不確定要因は粘り強く推論と実行を繰り返す。生物に絶対はないが、成功確率を上げられることができる。一番忘れてはいけない事は直接的、間接的に協力してくれる人への感謝だ。(吉虫)

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