転んでもただは起きない~カワラ編

ブリードルーム

「発見はミスから生まれる。」なんて恰好をつけたいが、今回の事はただのミスだった。実験で仕掛けたカワラ一四○○㏄菌糸ビンは交換時期を過ぎても放置された。その結果、カワラ菌糸ビンは極限状態でどこまで耐えうるか知ることができた。

カワラ菌糸ビンは一般的に六カ月までの冷蔵庫保管と三カ月の使用期間と説明をしている。今回の実験は三カ月の冷蔵庫保管、〇・五カ月の常温保管、約五・五カ月の使用期間だった。結果は二本の菌糸ビンがドロドロに劣化して、二頭中一頭のオオクワガタ幼虫を死亡させた。一方で、残り二本は菌糸が食い尽くされオガの劣化が始まっていたが、ツヤの良い大きな状態で幼虫が取り出された。

菌糸ビン交換は元々九○日後の予定だったが約八○日遅れで実施された。幼虫は三令になったばかりの成長段階だった。菌糸の消費量、糞尿の排出量はともに多くオガの劣化スピードが速かったと推測される。また、環境設定も室温二六~二四度、湿度六○~七○と劣化が進みやすい状態だった。

この実験結果は菌糸ビンの消費期間を絶対的に示すものでない。導き出せるものは極悪条件下での限界値を推定できる程度だ。条件が変われば耐久期間は変わる。例えば、食が進まない幼虫は菌糸ビンに六カ月以上も滞在しても菌糸の劣化がないまま羽化する場合もある。温度や湿度を下げれば菌糸ビンの劣化スピードを抑えることも可能だ。

今回はカワラタケの菌糸ビンで産卵から羽化まで飼育するための初期実験の一環だった。カワラタケ属の菌糸ビンは一般的な使用方法であれば幼虫育成、耐久性、作業性の問題がないと判断できる。また前回の記事で書いたオオクワガタのカワラ産卵実験は産卵数で優位に働く可能性を示唆していた。今回はミスから生まれた結果だが今年の実験をカワラ菌糸ビンで行うことを後押してくれた。(吉虫)

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