
慣れは時に落とし穴になる。人の心は弱く、今迄大丈夫だったから、今後もそうだと思い込んでしまう。だから、我々は定期的にふりかえり、原理原則に基づいて道を確かめなければならない。先日、筆者はクワカブ生体の品質について考察する機会を得た。今回は当たり前だが重要な事を書き連ねてみた。
品質は専門的に学ぶと数十の区分がある。今回は3つの品質について書く。一つ目は「一元的品質」である。これは充足されれば「満足」、不充足であれば「不満」を引き起こす品質要素だ。これが満たされなれば、どんな魅力的な個体だろうが顧客は気に入らないと感じる。昆虫業界は飼育だけでなく繁殖を目的とする顧客がいる前提だ。最低限必要な品質要素は個体が健康で、ブリードが上手いき天寿を全うできる事だろう。
二つ目は「魅力的品質」である。これは「一元的品質」が満たされていることが前提となる。クワカブ業者も顧客もついサイズに目が行く。顧客は期待値として大型個体を繁殖できる品質を切望していることを示唆する。付け加えれば、オオクワガタの七〇ミリ台が普通になった様に、「魅力的品質」は時代を経て「一元的品質」になることもある。
三つ目は「当たり前品質」である。これは充足されて当たり前、されなければ不満になる品質要素だ。クワカブで一番に思い浮かぶことは死着、欠損、着後すぐに死亡等である。これらは顧客の目的が全く満たされない状況である。個体の種類、血統は正しく、嘘があってはならない。
世の中で一番難し事は単純で当たり前のことを継続することだ。なぜなら人は弱い生き物であり、都合の良い楽な方へ流れされるからだ。ふりかえりと仕切り直しは、慣れという魔物が掘った落とし穴を埋める。当たり前の事を原理原則に基づき書いたが、この事は誰もが陥る罠なので心に刻んでいきたい。(吉虫)


