エントロピーとブリード【後編】

ブリードルーム

実はこの三年間、現場である問題と格闘していた。クワカブ研究所はデータの蓄積と分析を主眼にしていた。死亡データの入力は生存期間を知る上で重要なデータのひとつだ。ところが、このデータは死亡した虫を「乱雑」にしてしまったため崩壊した。

ブリード管理は流れの中で、種類、羽化年、使用用途、番号順で「整然」と管理していた。だから、「整然」とした状態で死亡虫を分けておけば、死亡入力はスムースにできるはずだった。ところが、死亡した虫は「乱雑」に一カ所に、しかも死亡日を記載せずにまとめて置かれていた。実はこれの状態が一進一退しながら、隠蔽もあり三年も続いてしまった。

当然ながら死亡データ(生存期間)はこの時点で信頼性がなくなった。加えて、「乱雑」から「整然」に戻す作業が発生した。計算では作業量は3倍に増えた。理由を聞くと答えは「めどう」でデータ崩壊については「…」。

「仕事ができる、できない」はいかにも昭和的なので使わなかった。その代わりに「何でぐちゃぐちゃにしちゃうんだ?」と聞いた。手順は説明してあるがどうしてもできない。できない理由は手順以外にあると考えた。エントロピーをブリードに当てはめ、自然言語に変換すると、仕事のやり方は伝わった。

選んだ言葉は「整然」、「乱雑」だった。エントロピーは状態の乱雑さがグラデーションで存在するが、単純化のために二極化した。「乱雑な状態」は仕事をしづらい、「整然とした状態」は仕事をし易いと変換した。仕事は時間に変換できるので、時間がかかる、かからないと説明した。

グラフは「整然」→「整然」、「乱雑」を比較している。「整然」状態は維持に手間をかれば総合的に時間が最もかからない。5S活動は重要だ…本当に理解している人は一部だった。未入力データが大量に残り苦戦しているものの、今は解決方向に向かっている。(吉虫)

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